2016年産業組織心理学会参加レポート①:専門性マネジメントの実証的研究

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2016年産業組織心理学会参加レポート第一弾は、山本寛先生(青山学院大学)の「専門性マネジメントの実証的研究―専門職のキャリア自律重視のキャリア開発の観点から」という研究発表についてです。

従業員の専門性をいかにマネジメントするかは、企業にとって重要なことです。従来はナレッジマネジメントという、熟練した専門家のノウハウをマニュアル化する方法が取られていましたが、山本先生の発表によると、このような取り組みには限界があるということでした。

そこで、キャリア発達支援をベースとして従業員の専門性を高めることができないかというのが、本研究の主旨です。実際に研修を行う前の段階として、専門職(看護師)を対象とした調査研究が行われました。

その結果、自律性(主体性や専門性の発揮)の促進を目的としたキャリア開発の仕組みが整っている組織で勤務していた対象者(看護師)は、高い専門性(専門への志向性)と同時に、キャリア発達(マンネリ感の低さ、キャリア展望)を示したということです。

専門性の評価が専門への志向性のみであった点は改善の余地があります。専門的な能力など、専門性の別の側面についても評価する必要がありそうです。また、今後は、実際にキャリア開発支援を行い、それとプロフェッショナル・ディベロプメントなどのその他の専門性開発支援との効果を比較するような研究も必要です。

しかし、本研究は、企業による従業員のキャリア開発支援の重要性を改めてしめしたといえるでしょう。

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はじめに

* 専門性のマネジメントはナレッジマネジメントでは不十分。なぜなら、暗黙知を完全に移行することはできないから

* 人的資源管理の観点から見た具体的な専門性マネジメント
・能力開発は専門性を高める(Drucker 1988; 中川 2003)
・組織に依存したキャリア発達の終わり⇒企業の役割は従業員に学習の機会を与えること

* 専門性と専門性意識
・専門性は個々人によって異なる
・専門性意識は標準的な指標で測定できる(コミットメント、効力感)
 -コミットメント:専門性への志向性
 -効力感:能力

* 仮説
・自律重視のキャリア開発(主体性、実践における専門の発揮)は専門性コミットメントを向上させる
・自律性重視のキャリア開発は、キャリア発達を促進(内容プラトー化(Bardwick 1986)が無い、キャリア展望)することで、企業の利益となる

方法
* 対象
・ 全国の認定看護師7,363名から無作為に抽出した822名、有効回答455名(有効回答率55.35%)

* 尺度
・キャリア自律重視のキャリア開発(山本 2008)
・専門性コミットメント:キャリア・モチベーション尺度(Noe, Noe, & Bachhuber 1990)
・内容プラトー化(Millman 1992)
・キャリア展望(堀内・岡田 2009)

* 分析
・ブートストラップ法による媒介分析(Preacher & Hayes 2008)

結果
・仮説は支持された

考察
* キャリア開発支援は従業員満足度を高めるだけでなく、専門性(専門性コミットメント)を高めることがわかった
* 自律性重視のキャリア開発支援は、内容プラトー化よりもキャリア展望の方に強く効いていた
* 今後はコミットメント(志向性)以外の専門性の側面についても検討する必要がある
* 企業は一層、自律性重視のキャリア開発支援を行う必要がある







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